気球はどこまで遠くに行けるの?

「気球でどこか遠くへ連れて行ってもらいたい!」
そんな気分になるときありますよね。
飛行機と違ってエンジンのない気球なら、ふわふわ~っとどこまでも遠くに行けるんじゃないか?
実は気球にはいろいろ種類があり、燃料をほとんど消費しない気球(ガス気球やスーパープレッシャー気球)もあれば、めちゃくちゃ消費する気球(熱気球など)もあります。
(この分類に関してはまた今度)
今回は、日本で一番んでいる熱気球に重点を置いて、そんな疑問にお答えします。
トピック
気球は風任せ
燃料と気温・気圧
通常の熱気球のフライト距離
熱気球飛行距離の日本記録と世界記録
気球は風任せ
よく小学校の算数で【距離=速さ×時間】で計算するように教わります。
一定の速さで直線的に進めれば問題ないのですが、気球の場合そう単純に計算できません。
気球が実際に飛ぶ距離は、
①風の「速さ」、②浮遊している「時間」に加えて、③風の「方角」、
の3つの要素が関係します。
①風の速さ
気球はエンジンがないので、スピードは風の速さに委ねられています。
これが大前提としてあるのですが、この風のスピードは一定でないうえに、高度・場所・時間と共に変化していきます。それが厄介で、毎日毎日このスピードは異なってしまうのです。

③浮遊している時間
気球は浮遊していないと進まないので、この時間も大切です。この時間は「燃料をどれだけ積むか」が大きいのですが、その燃料の消費量も気温や気圧により毎日異なってしまいます。
下の画像は、熱気球に積む燃料シリンダーです。通常1本20Kgのプロパンガスが入る大きさのを使用します。

②風の方角
風は常に一方向に流れているのではなく、波打つように上下左右に流れています。
その方向はだいたい大気の層で分かれているため、高度を変えると風の方角も変わるのがほとんどです。熱気球は高度だけは操作できるので飛ぼうとしたり、着陸しようとしたら必然的に高度は変わってしまいます。

例えば、上空である一定の方角へ進んでたとしても、降りようとして高度を下げたら、離陸地に戻ってきてしまう、なんてこともあるのです。
このように、通常距離を求める計算に必要な要素すべてが天気に大きく委ねられているため、風や天気次第で遠くへも行けるし、近くに戻って来れるのが熱気球になります。
燃料と気温・気圧
先ほどの、②浮遊している時間ですが、ただ燃料を多く積んでれば長く飛べるわけでもないのです。(多いにこしたことはないのですが。。)
通常熱気球は、プロパンガスを燃料にした炎によって球皮(風船部分)の温度を上げて浮遊します。
この際、外気と風船内の温度差によって気圧の差ができ、浮遊します。
簡単に言うと、外気が寒ければ寒いほど、ちょっと温めただけで気球は浮くのです。

ただ、寒ければ寒いほどプロパンガスの圧力も下がり、バーナーの炎が弱くなってしまうので思うように球皮を温められないことがあります。このバランスが重要なのです。
そのため、一番良い条件としては、外気は寒く、ガス圧力は高くした状態が、最も熱効率よく、気球を上げられるのです。
そのため、あまり知られてないですが日本での気球シーズンは秋冬なのです!
そして寒冷地や寒いときに気球を飛ばす場合は、このガス圧を下げないようにフライト前に保温しておいたり、窒素を入れてガス圧を高めたりして調整します。
通常の熱気球のフライト距離
日本で多くみられる熱気球はだいたい2~3人乗り、2000~3000㎥の球皮です。
通常ガスシリンダーは3~4本積むのですが、着陸するときは1本予備を満タンで残して着陸する余裕を持つのが理想です。
かなり大まかですが、私たちが良く飛ぶ渡良瀬をイメージすると、
1フライト45~60分程度、距離は冬場だと10~20Km、夏場だと3~5km程度が飛ぶことが多いです。
県境に位置するので、簡単に3県を跨いでべちゃいます!

これはフライトエリアの状況にも関係しており、冬場は周りの田んぼが刈り取られているため、広くフライトエリアをとれるのですが、夏場は逆に狭くなってしまいます。
この辺りも気球は自然と共存しながら飛んでいるのがわかりますね。
熱気球飛行距離の日本記録と世界記録
さて、そんなあらゆる要素が盛り込まれた熱気球フライトですが、その中で距離記録を簡単にご紹介します。
距離日本記録
2366.1km 神田 道夫(埼玉)
西オーストラリア州ムレワ~南オーストラリア州エルデナ・ステーション
カメロン N-210
1994.6.23~24<認定1994.8.10>
日本国内での距離記録
419km 神田 道夫(埼玉)
島根県隠岐郡~長野県飯田市
カメロン O-56
1984.2.5<認定1984.8.8>
出展:NAC
http://www.aero.or.jp/record/rec-balloon1.htm
世界記録
サブクラスAX(熱気球)での距離世界記録
7 671,91 km PER AXEL LINDSTRAND (GBR)
Miyakonojyou (Japan) - Yellowknife (Canada)
AX-15 (Hot-air balloons: 22 000 m³ and above)
15 Jan 1991
出展:FAI
https://www.fai.org/record/275?type=node&id=24392
気球のサイズやそれぞれの記録に関しては、また別の時にブログに書きたいと思います。
日本の神田道夫さんは、AX10~14の世界記録を保持していて、気球人にとっては伝説的な方ですが、記録を見て改めてすごさを感じます。
今後記録についても、詳しく調べてみたいと思います。
様々な要素と記録がある熱気球ですが、初めての方は距離は気にせず、ゆったりとした雰囲気をまずは楽しんでいただくのがいいかもしれませんね!