
こんなところにも熱気球 気球クラブ、その後
更新日:2020年7月18日
気球が物語の中央にあり、かつ青春群像劇の絶妙な行間になっている映画
それが映画「気球クラブ、その後」です。
あらすじ
熱気球クラブ「うわの空」のパイロット村上がバイク事故に。気球クラブのメンバーが携帯電話で連絡を取り合い、かなり久しぶりの、そして束の間の活動を行う。毎週のように熱気球飛ばしていたあの頃からもう5年の月日が経っていた。。。
見どころ1 ちゃんと現物の熱気球を渡良瀬で飛ばしているところ
みたことがある景色、みたことがある風景、みたことがある土手、みたことがある車止め。ちょっとマニアックな視点かもしれませんが、渡良瀬遊水地を頻繁に訪れたことのある人だったら強い既視感を覚える場面が多々あります。ちゃんと実物の気球を使用し撮影しているので、リアリティが半端ないです(だってリアルだもの)。
今の時代、CGが発達しすぎて、わざわざ実物の気球を飛ばさなくてもフライトシーンを再現できてしまうことが多いのですが、この映画では1週間の撮影スケジュールの中、わずか1日の気球ロケで撮影完了してしまったそうです。そんな天候運が羨ましい。ちゃんと現場の音もリアルに使っているところが素晴らしい。しっかり画面の向こうにホンモノ気球があるのが嬉しい。
ちなみに気球クラブ「うわの空」は現実にも存在します。(撮影協力していたそうです)
”うわの空”ほど青い春—『気球クラブ、その後』主演・深水元基、”熱気球クラブ・うわの空”代表・荒木威さん、独占対談(外部リンク)
みどころ2 マニアックな気球用語の採用
作中字幕付きで丁寧に解説してくれています。
こんな感じで。
(気球用語)
【気球車】
気球車=気球を追う車=ハイエース
簡単明快な説明だけれど、その先の肝心な説明がないのがミソ。
なんでハイエースじゃなきゃいけないのか説明がない。
例えばこっちも
(気球用語)
【ヘビる】
へビる=ヘビにする=片付ける
同じく言葉の意味はわかるけど「なぜヘビなの?」が抜けている絶妙な説明。
マニアックな着眼点と、皆までいわないスタンスがいい味出しています。
企画段階からすでに即興制作の色合いが濃かったらしく
園子温監督の個性が前面に出てくる映画に仕上がっています。
みどころ3 気球の上でやっていた素敵なこと
なんでしょうね。観てのお楽しみ。永作博美が素敵。
映画寄りな感想を述べてしまうと、ものすごーく青い映画です。
飲んでばっかりいるし、モラトリアムなメンバーが多いし、飲んでばっかりいるし。
仕様のない人たちだけれど、ある儀式を経てモラトリアムから完全脱します。それが「その後」なのでしょうね。
また、気球は作中色々な暗示で使われています。しかも色々な種類の気球が。気球に人の心を具現化する役回りを持たせており、小道具でも大道具でもない、はっきりいって主役級の存在感があります。お見逃しなく。
見どころ4 ちょっといいセリフ
ちょっと印象に残ったセリフを抜粋してみました。
あくまで個人的に刺さっただけのセリフです。
●
彼ね、ちゃんとここに戻ってくるから
●
ほんとうに
気球なんか
どうだってよかったんです
●
「みんな薄情ね」
「5年ってそういうもんだよ」
●
みんなっていったって誰がみんなだかわかんないんだけどさあ
●
えー、みなさん。中途半端なみなさん。中途半端にたった5センチ浮いたり沈んだりしているみなさん。
みなさんに告ぐ!
●
渡良瀬いこうか
●
人の気持ちを宙吊りにするのが得意なようだね
●
映画「気球クラブ、その後」はAmazonビデオでプライム会員で無料で視聴できます。(2020年7月現在)
この青春群像劇、夏空に思いを馳せながら観るのが乙だと思います。
若くても、枯れていても登場人物の誰かに自分を投影できる役がきっとあるはず!
それではまた。

映画データ
気球クラブ、その後
2006年公開
93分
製作国 日本
監督 園子温
出演 深水元基、川村ゆきえ、永作博美、いしだ壱成
音楽 松任谷由実
配給 エム・エフボックス